ブナさんのおはなし

おじじの日記より

雨と風の中残ったのは
おばばと二人
長いモリ生活
こんな日も
少なくない

ブナの実が多い
大木の下なら
すぐ
手のひら一杯
拾える
Kさんが
ブナの実を煎って
アボガドとナッツと
の煮込み料理
初めて食べた
美味しかった

東北のブナさんは
今年
8年ぶりの大豊作
新聞で読んだ
ブナさんは
普通
6年くらい毎に
大豊作の周期を
繰り返してきた
8年は長いね

なぜこんな周期があるのか

ブナさんの実は
ドングリさんや
トチの実さんと違って
渋み=毒を含まない
そのまま食べられる
しかも大量に実を付ける
クマさんが食べて
リスさんが食べて
ウサギさんが食べて
ネズミさんが食べて
虫さんが食べても
なお
1平米100本の芽をだすほど
それほど大量の実を落とす
他のいのちさんたち
みんなを生かして
自分も生きる
仏のような生き方

ただ
全力を惜しみなく出せば
疲れもする
5年くらい
休みも必要
それに
毎年沢山の実を落とせば
例えばネズミさんは
ネズミ算式に増え
生態系が狂う
落とす実を減らし
ネズミさんが
元の数になるのを見計らって
またどっと
実を落とす
ブナさんの
素晴らしい知恵

1980年代
ブナさんのこの周期が
3~4年に変わったと
ある本で読んだ
その理由を
ブナさんに
直接聞いてみたい
わたしのブナの山旅
の始まり

始めた途端
わたしはブナさんに
惚れた
理屈抜き
惚れて
惚れて
惚れきった時
ブナさんとわたしの
境目が
どろりと溶けて
見たことのない世界の
入り口に立っていた
そこでは
無数のいのちさんが
縁によって
結ばれる
わたしのいのちも
無限に小さくなって
その一端に
繋がる

人間は
モリさんと
無縁である時
バカでかい存在だが
小さい
小さい
もう一つ
小さいと
わかった時
反比例して
喜びも
幸せも
深さを増す

惚れきることは
いのちを
全うすること
モリのいのちさんとの縁が深まると
人間さんとの縁も
不思議と深まる
ブナさん
ありがとう